[はじめに]
東京医科歯科大学眼科の強度近視外来は第3代目教授 所 敬先生により1975年に設立された世界で最も長い歴史と伝統を誇る強度近視専門の外来です。強度近視の患者さんを専門的に診察、治療を行ってきた長年の経験を生かし、常に強度近視の患者さんに最善の診療を提供することを目的としています。
[強度近視とは]
成人の眼球は直径約24 mmの球形をしています。何らかの原因により、眼球の前後方向の長さ(眼軸長、といいます)が、異常に延長した病態を強度近視といいます(右図)。大体27 mm以上、長い人では30 mmを超える方も沢山おられます。近視の度数でいうと、8ジオプトリーを超える近視を強度近視と言います。原因については遺伝的要素が大きいとされていますが、最近頻度が増加していることから近業などの環境要因もあると考えられます。
近視の発生頻度には人種差があり特にアジア人に多いことが知られています。日本では厚労省研究班平成17年度調査報告書では、強度近視は緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性、黄斑変性についで第5番目の失明原因であります。強度近視による視覚障害は働き盛りの年齢に起こることが多く、社会経済に与える影響は深刻です。
[強度近視の眼の合併症について]
このように、強度近視では眼軸長が異常に長くなることにより、特に視機能に重要な視神経や黄斑部(おうはんぶ)網膜などの部位が機械的に伸展されるとともに変形し、様々な強度近視特有の眼底病変を起こしてきます。
A.黄斑部出血
強度近視の患者さんでは網膜と脈絡膜を隔てるバリアのような働きをしているブルッフ膜という膜に亀裂が入ることがあり、この亀裂を通って脈絡膜から新生血管(しんせいけっかん)という病的な血管が網膜に入り込んで増殖してしまう病態です(右図)。突然の視力低下で発症することが多く、早期診断、早期治療が重要です。本学では倫理委員会の承認のもと、血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害する抗体を眼内に注入する治療を行っており、良好な治療成績を国内外で報告してきました。
さらに現在アジア諸国との国際共同治験として新しいVEGF阻害薬の臨床試験を施行しています。
B.近視性牽引黄斑症
強度近視では眼球が前後方向に伸びる際に、伸びきれなくなった網膜がはがれてきてしまうことがあります。強度近視の方の10%くらいにみられ、放置すると網膜剥離や黄斑円孔といった、より重篤な合併症に進行する危険があります。本症の診断には網膜の断層像を観察することができる光干渉断層計(OCT)という検査が非常に有用です(右図)。特に本症の発症早期には自覚症状に乏しく見過ごされやすいことも多いので、強度近視の患者さんは自覚症状がなくても定期的にOCT検査を行っておくことをお勧めしています。
C.近視性視神経症
強度近視の方で意外に見過ごされやすいのが視神経障害です。強度近視は緑内障の危険因子でもあり、また眼球の異常な延長により、視神経やその神経線維が機械的に障害されやすく、視野障害の原因となります。強度近視では上記のような黄斑部病変を合併するために視神経症が見過ごされやすく、気が付いた時には末期の状態であったということも稀ではありません。強度近視の患者さんはやはり定期的に視野検査を受けることが望ましいでしょう。
[強度近視外来で行う最新の治療方法]
強度近視外来では、受診された一人一人の患者さんに対し、現在問題となっている病態は何か、また他にも将来視覚障害の原因となりそうな病態はないか、まず的確に判断します。その結果は患者さんに画像をお見せしながら説明し、最も良いと考えられる治療法について患者さんと十分に議論しながら進めさせていただきます。
常に専門外来の医師一人一人が知識と経験を磨きながら最良の診断、最高の治療を提供できるように切磋琢磨しています。
[強度近視外来への受診を希望される患者様へ]
強度近視外来は原則として予約制です。初診の患者さんはまず金曜日の午前中の一般外来を受診してください。その上で、強度近視外来で精密に診察させていただいた方が良いかどうか、検討させていただき、ご本人の希望もお伺いした上で予約を取らせていただきます。
また、強度近視外来は正確な診断を行うために蛍光眼底造影、光干渉断層計などの種々の検査を行います。これらは正確な診断、治療のために必要な検査ですが、そのために通常の外来に比べて待ち時間、検査時間が非常に長くなっております。この点だけご容認いただけましたら幸いです。
[診療日]
金曜日 14:00〜16:00
[診療スタッフ]
大野京子(准教授)、安澄健次郎、島田典明、宮澤有里子、森山無価、末吉真一、林和歌子、長岡奈都子、坂 夏子、福田香織、田中裕一朗、横井多恵